糖尿病と聞くと、「食べ過ぎ」や「運動不足」など生活習慣の乱れが原因というイメージが強いかもしれません。
しかし、「1型糖尿病」は生活習慣や体型(肥満かどうか)とは全く無関係に、ある日突然発症する病気です。若い方や子どもに多い傾向はありますが、中高年になってから発症することも珍しくありません。
「最近、異常に喉が渇く」「食べているのに急激に痩せてきた」という場合は、体の中でインスリンが枯渇している危険なサインかもしれません。早期の診断と適切な治療が命を救う鍵となります。

1型糖尿病の原因
胃の裏側にある「膵臓(すいぞう)」には、血糖値を下げる唯一のホルモンである「インスリン」を作り出す細胞(β細胞)があります。
1型糖尿病は、免疫(本来はウイルスなどから体を守る働き)の異常により、自分自身のβ細胞を誤って攻撃し、破壊してしまうことが主な原因です。
β細胞が壊れると、インスリンがほとんど、あるいは全く作られなくなってしまうため、血液中の糖分を細胞に取り込めず、著しい高血糖状態に陥ります。なぜこのような免疫の異常が起こるのかは、まだ完全には解明されていません。
このような症状はありませんか?
1型糖尿病は、何年もかけて進行する2型糖尿病とは異なり、数週間から数ヶ月(劇症の場合は数日)という短期間で急激に症状が現れるのが特徴です。
- 異常な喉の渇き、大量の水を飲む
- 尿の量と回数が極端に増える
- 普通に食べているのに、急激に体重が減る(1ヶ月で数キロ〜10キロ以上など)
- 全身の強いだるさ、疲れやすさ
- 足のつり、筋肉のけいれん
危険なサイン
インスリンが極端に不足すると、体は糖の代わりに脂肪を分解してエネルギーを作ろうとします。
この時、血液が酸性に傾く「糖尿病ケトアシドーシス」という非常に危険な状態を引き起こします。
必ず受診を
- 強い吐き気、嘔吐
- 激しい腹痛
- 息が甘酸っぱい匂い(フルーツのような匂い)がする
- 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が鈍い
これらの症状が出た場合は、一刻を争う事態です。ためらわずに救急車を呼ぶなど、速やかに救急医療機関を受診してください。
診断と検査について
問診で急激な体重減少や喉の渇きなどのエピソードを伺い、血液検査と尿検査で診断を確定させます。
- 血糖値・HbA1c検査
血液中の糖の濃度を調べます。著しい高血糖を示します。 - 尿検査
尿に糖やケトン体(脂肪が分解されたときに出る物質)が出ていないかを調べます。 - インスリン分泌能検査(Cペプチド)
体の中でインスリンを自力で作る力がどれくらい残っているかを調べます。 - 自己抗体検査(抗GAD抗体など)
自分の膵臓を攻撃する抗体があるかを調べ、1型か2型かを鑑別します。
治療について
1型糖尿病の治療は、体で作られなくなったインスリンを外から補う「インスリン療法」が絶対に必要となります。飲み薬だけで治療することはできません。
インスリン注射(ペン型注射器)

食事の前に打つ「超速効型」や、1日1〜2回打って基礎的なインスリンを補う「持効型」などを組み合わせて使用します。
針は非常に細く短いため、痛みはほとんどありません。
専門医療機関との連携

より細やかな血糖コントロール(インスリンポンプ療法など)が必要な場合や、発症直後で入院による導入が必要と判断した場合は、速やかに糖尿病専門医や総合病院をご紹介いたします。
前向きに生活していくために
「一生注射を打ち続けなければいけない」と診断されると、大きなショックを受けられると思います。
しかし、インスリンを適切に補充し、血糖値をコントロールできれば、食事や運動、仕事、妊娠・出産など、健康な方と全く変わらない生活を送ることができます。
プロスポーツ選手として活躍している1型糖尿病の患者様もたくさんいらっしゃいます。当院でも、患者様が病気と上手く付き合いながら、ご自身の人生を豊かに歩んでいけるよう、しっかりとサポートさせていただきます。

やさしい内科クリニック院長 山村 聡
日本内科学会認定内科医。糖尿病や甲状腺・内分泌疾患、AGA治療を専門として治療を行っています。最近は保険診療以外にも低用量ピルなど自由診療の治療も実施しています。
経歴
・九州大学医学部卒
・高邦会 高木病院 臨床研修
・昭和大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 助教
・銀座有楽町内科 前院長
・やさしい内科クリニック開院
