子宮内膜症

更新日: 2026/08/17

「生理痛が年々ひどくなっている気がする」
「鎮痛剤を飲んでもあまり効かない」
「生理のとき以外もお腹や腰が痛い」

このような症状は、単なる「重い生理痛」ではなく子宮内膜症のサインである可能性があります。

20〜30代の女性に多くみられる病気で、放置すると将来の不妊につながることもあります。

「これくらい我慢すればいい」と思わず、気になる症状がある場合は一度ご相談ください。

子宮内膜症とは

本来、子宮内膜は子宮の内側だけに存在する組織ですが、子宮内膜症では子宮内膜に似た組織が卵巣や腹膜、ダグラス窩*1など子宮以外の場所で増殖してしまいます。

発生する部位は骨盤内が中心ですが、まれに腸管や膀胱、へそ、肺などに及ぶこともあります。

20〜30代の女性で発症することが多く、発症のピークは30〜40歳ともいわれています。月経のある女性の10人に1人前後にみられるとされ、決して珍しい病気ではありません*2

*1 子宮と直腸の間にあるくぼみ。子宮内膜症が発生しやすい部位のひとつです
*2 有病率の報告は調査によって幅があり、10〜15%程度、あるいは約2割とする報告もあります

なぜ強い痛みが起こるのか

子宮内膜症は、卵巣から分泌されるエストロゲン (卵胞ホルモン) の影響を受けて月経のたびに悪化するという特徴があります。

子宮の外にできた内膜組織も、月経のサイクルに合わせて増殖と出血を繰り返します。しかし、正常な月経と違い、この出血は体外へ排出されずお腹の中にとどまってしまいます。

その結果、周囲の組織に炎症や癒着が起こり、強い痛みの原因となります。発症の原因ははっきりと解明されていませんが、月経血の一部が卵管を通じてお腹の中に逆流し、そこにとどまるとする説が有力とされています。

また、晩婚化や出産回数の減少などライフスタイルの変化により、女性が生涯に経験する月経の回数が昔と比べて大幅に増えていることも、発症・悪化に影響していると考えられています。月経のたびに増殖と出血を繰り返す病気であるため、月経回数が多いほど、体への負担が積み重なりやすくなるためです。

反対に、妊娠中は排卵や月経が一時的に止まるため症状が和らぐことが多く、閉経後もエストロゲンの分泌がなくなることで症状は落ち着いていく傾向があります。

卵巣にできる「チョコレート嚢胞」

子宮内膜症が卵巣にできた場合、月経のたびに卵巣内に血液が溜まり、袋状の嚢胞ができることがあります。

溜まった古い血液がチョコレートのように見えることから「チョコレート嚢胞」と呼ばれ、子宮内膜症の中でも比較的よくみられるタイプです。

このほか、子宮とその周りの靭帯や、子宮と直腸の間 (ダグラス窩) に病変が深く入り込む「深部子宮内膜症」と呼ばれるタイプもあり、周囲の臓器と隣接しているため画像検査でも発見しにくく、診断や治療がより難しいとされています。

発症・悪化しやすい人の傾向

発症の原因を完全に予防することは難しいものの、以下のような方は比較的リスクが高い傾向にあるとされています。

発症しやすい傾向

  • 初経の年齢が早い
  • 月経周期が短い、または経血量が多い
  • 妊娠・出産の経験がない、または少ない
  • 血縁者に子宮内膜症の方がいる

予防的にはたらく傾向

  • 妊娠・出産の回数が多い
  • 定期的な運動習慣がある

これらはあくまで統計的な傾向であり、当てはまらない方でも発症することはあります。心当たりがある方は、症状が軽いうちから体の変化に注意しておくとよいでしょう。

このような症状はありませんか?

子宮内膜症の代表的な症状は「痛み」です。月経痛 (月経困難症) は、患者様の9割にみられるといわれています。

  • 市販の鎮痛剤が効きにくい、強い月経痛がある
  • 年々、生理痛が強くなっている
  • 月経時以外も下腹部や腰の痛みが続く (慢性骨盤痛)
  • 排便時や性交時に痛みを感じる
  • 経血の量が多い、レバーのような塊が混じる
  • なかなか妊娠に至らない

毎月の生理痛のために学校や仕事を休む、鎮痛剤を手放せない、といった状態が続いている場合は、日常生活に支障が出ているサインです。

注意したいのは、痛みの強さと病状の重さは必ずしも一致しないという点です。

内膜症がまだ小さい範囲にとどまっていても強い痛みが出ることもあれば、進行していてもほとんど症状を感じない場合もあります。「痛みが我慢できる程度だから大丈夫」と自己判断せず、気になる症状がある場合は早めの受診をおすすめします。

ただの生理痛と何が違うの?

初経の頃から続く軽い生理痛の多くは、子宮の収縮によって起こる「機能性月経困難症」で、加齢とともに軽くなることも珍しくありません。

一方、子宮内膜症による月経困難症は年齢を重ねるとともに徐々に痛みが強くなっていくのが特徴です。「以前より鎮痛剤の量や回数が増えた」「毎年つらさが増している」と感じる場合は、婦人科への相談を検討してください。

放置するとどうなる?

不妊との関係

子宮内膜症は、痛みだけでなく不妊の原因にもなります。

妊娠を希望する患者様のうち、半数近くが不妊に悩むともいわれています。癒着によって卵管の通りが悪くなったり、炎症性の物質が卵子や精子の働きに影響したりすることが関係していると考えられています。

妊娠・出産のタイミングを考えている方にとっては、症状の程度にかかわらず一度検査を受けておくことにも意味があります。

チョコレート嚢胞の増大・破裂リスク

チョコレート嚢胞は放置すると徐々に大きくなり、まれに嚢胞がねじれたり (茎捻転) 、破裂して激しい腹痛を引き起こしたりすることがあります。突然の強い下腹部痛や嘔吐を伴う場合は、緊急の受診が必要になることもあります。

また、閉経を迎えエストロゲンの影響がなくなると症状は落ち着く一方で、長期間にわたって大きな嚢胞がある場合は、まれに卵巣がんを発症するリスクが高まるとの報告もあります。そのため、症状が軽い場合でも自己判断で通院をやめず、定期的な経過観察を受けることが大切です。

検査について

子宮内膜症は、症状が出てから診断がつくまでに時間がかかりやすい病気のひとつともいわれています。「そのうち治るかもしれない」と様子を見ているうちに、治療の開始が遅れてしまうケースも少なくありません。

子宮内膜症が疑われる場合、一般的に以下のような検査が組み合わせて行われます。

主な検査の流れ

  • 問診・内診
    症状の経過や痛みの部位、しこりの有無などを確認します
  • 経腟超音波検査
    チョコレート嚢胞の有無や大きさを確認します
  • MRI検査
    超音波では捉えにくい病変の広がりをより詳しく確認します
  • 血液検査 (CA125*)
    内膜症で高値になることがある腫瘍マーカーを確認します
  • 腹腔鏡検査
    確定診断や治療を目的に行われることがあります

*CA125の数値だけで内膜症の有無を確定することはできず、他の検査結果と合わせて総合的に判断されます

腹腔鏡検査は必ず必要?

子宮内膜症の確定診断には、お腹の中を直接観察する腹腔鏡検査が必要とされています。

ただし、問診・内診・超音波検査・MRI検査・血液検査の結果からある程度診断がつくケースも多く、すべての方に腹腔鏡検査が行われるわけではありません。症状が強い場合や、不妊治療を急ぎたい場合などに検討されます。

当院 (一般内科) では、問診や基本的な血液検査によるご相談は可能ですが、内診や経腟超音波検査など婦人科的な診察、確定診断のための画像検査・腹腔鏡検査には対応しておりません

症状から子宮内膜症が疑われる場合は、婦人科での詳しい検査をおすすめしております。

婦人科を受診するのに抵抗がある場合は?

「婦人科は少しハードルが高い」と感じる方も少なくありません。

その場合は、まず当院にご相談いただいても構いません。症状を丁寧にお伺いしたうえで、状況に応じて適切な婦人科医療機関をご案内いたします。おひとりで悩まず、まずはお気軽にお声がけください。

治療について

子宮内膜症の治療は、大きく薬物療法手術療法に分けられます。年齢や症状の程度、妊娠を希望するかどうかによって、適した治療法は異なります。

薬物療法

痛みの緩和や病気の進行を抑える目的で、主に以下のようなホルモン療法が用いられます。

治療薬特徴
低用量ピル
(経口避妊薬)
排卵を抑えて月経困難症の症状をやわらげる。比較的長期間、継続しやすい
低用量ピルの種類は複数ありますので事前に違いを把握することをおすすめします。
黄体ホルモン製剤
(ジエノゲストなど)
エストロゲンを含まないため、ピルの服用が難しい方にも用いられることがある
GnRHアナログ製剤一時的に閉経に近い状態をつくり、病巣の活動を強く抑える。のぼせなど更年期のような症状が出ることがある

これらの薬物療法は、あくまで症状の緩和や進行の抑制を目的としたものであり、病気そのものを完治させるものではありません。多くの場合、月経のある期間は長期的な服薬継続が必要になります。

手術療法

薬物療法で十分な効果が得られない場合や、チョコレート嚢胞が大きい場合、妊娠を希望されている場合などには、腹腔鏡による病巣の摘出手術 (保存手術) が検討されます。

今後の妊娠を希望されない方で症状が強い場合には、子宮や卵巣を摘出する根治的な手術が選択されることもあります。手術後も再発の可能性があるため、術後に薬物療法を併用して経過をみていくケースも少なくありません。

治療薬の選択やホルモン療法の管理には婦人科での専門的な判断が必要です。子宮内膜症が疑われる、またはすでに診断を受けている場合は、婦人科医療機関にご相談ください。

日常生活での注意点

治療と並行して、日々の生活を見直すことも症状の緩和につながります。

  • 体を冷やさない
    骨盤内の血流が悪化すると痛みが強まりやすいため、冷え対策を心がける
  • 禁煙
    喫煙は月経困難症を悪化させる要因のひとつとされている
  • バランスの良い食事と適度な運動
    血流やホルモンバランスを整えることを意識する。特に定期的な運動習慣は発症リスクの低減にも役立つとされている
  • ストレスをためすぎない
    過度なストレスはホルモンバランスを乱し、症状を悪化させる一因になりうる
  • 定期的な婦人科受診
    治療中・経過観察中の方は自己判断で通院を中断しない
  • 痛みを我慢しすぎない
    鎮痛剤は痛みが強くなる前の早めの服用が効果的とされている。市販薬が効きにくい場合は無理をせず相談する
症状が軽くなったら治療をやめてもいい?

薬物療法によって症状が落ち着いても、それは病気が治ったのではなく、ホルモンの作用で活動が抑えられている状態です。

自己判断で服薬を中止すると、再び症状が強くなったり、病気が進行したりする可能性があります。治療の継続や中止については、必ず主治医とご相談ください。

つらい生理痛はひとりで抱えずにご相談を

「生理痛だから仕方ない」と我慢を続けている方は少なくありません。

しかし、その痛みの背景に子宮内膜症が隠れている可能性もあります。早期に気づき、婦人科で適切な検査・治療を受けることが、将来のご自身の体を守ることにつながります。

当院では一般内科の視点から症状のご相談をお伺いし、必要に応じて婦人科医療機関へおつなぎいたします。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。

Dr.Yamamura So

やさしい内科クリニック院長 山村 聡

日本内科学会認定内科医。糖尿病や甲状腺・内分泌疾患、AGA治療を専門として治療を行っています。最近は保険診療以外にも低用量ピルなど自由診療の治療も実施しています。

経歴
九州大学医学部卒
高邦会 高木病院 臨床研修
昭和大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 助教
銀座有楽町内科 前院長
やさしい内科クリニック開院

参考文献
・公益社団法人 日本産科婦人科学会「子宮内膜症
・一般社団法人 日本内分泌学会「子宮内膜症
・MSDマニュアル家庭版「子宮内膜症
・慶應義塾大学病院 KOMPAS「子宮内膜症